善意の“血”は誰のものか──日本の「血液経済」を追う

善意の“血”は誰のものか──日本の「血液経済」を追う

―― 日本赤十字・製薬・国際ハブを結ぶ人の輪と資金の流れ(出典付き・検証推奨)

リード

献血は無償の善意だ。だが、その先の流通をたどると、国民の血漿が海外で医薬品に加工され、日本へ再輸入される事例がある。公益法人である日本赤十字社、製薬企業、国の政策、そして国際フォーラムやシンクタンクを結ぶ人的ネットワーク――その交差点にこそ、説明責任と透明性を求めるべき「血液経済」の構造がある。


1|事実の整理:流通の「実務面」

公表資料をまとめると、基本の流れは次の通りだ。国民が提供した献血は日本赤十字社が採取・検査・保管を行い、輸血用の赤血球や血小板は国内で病院へ供給される。一方、血漿(プラズマ)の一部は製薬企業の「原料」として提供され、製剤化(プラズマ分画)には大規模な設備と継続的な原料供給が必要なため、海外の分画施設に委託されるケースがある。完成した製剤は輸入され医療現場で使用される。こうした実務の流れは、厚生労働省・赤十字・製薬各社の公表情報から確認できる。


2|なぜ「海外委託・輸入」が起きるのか(技術と経済)

理由は主に三点だ。第一に、プラズマ分画は高額な設備投資と高度なGMP管理を要するため、国内に十分なプラントが揃っていない。第二に、分画製剤の製造はスケールメリットが効く事業で、国際大手(例:Octapharma、Grifols、CSL 等)が供給力を持つ。第三に、経済性と供給安定性の観点から、企業が海外の既存施設に委託する方が現実的な場合がある。これらの点は業界報告や企業の年次報告書で示されている通りだ。


3|「人的ネットワーク」が仕組みを支える構図

重要なのは「人の流れ」だ。公表されている役員名簿や会議記録を見ると、(1)赤十字上層には厚労省出身の元高官が多く、行政との人的接点が強い、(2)財務・中央銀行の幹部はBISやWEFの場で国際金融ネットワークと接触する、(3)CSISなどのシンクタンクは元官僚や業界要人を招聘して国際的な政策ルートと結びつける──といった傾向がある。人的ネットワークは情報と影響力の流れを作り、政策や供給戦略の協調を促すが、同時に利益相反や透明性の問題を生む可能性もある。


4|問い:何が問題なのか?(公共性の視点)

整理すると、主な懸念点は三つだ。第一に透明性の不足。原料供給契約や輸出入量、輸出先などが十分に公開されていないため、国民の善意がどのように使われるか見えにくい。第二に費用負担の所在。外注や輸入に伴うコストは最終的に医療保険や税で賄われる可能性があり、公益事業が財政負担を生んでいる。第三に利害重複と説明責任。元官僚の公益法人ポスト就任や、国際フォーラムでの接触は自然な人材流動だが、利益相反の検証やガバナンスは不可欠である。これらはいずれも公的資料で検証可能な点だが、より詳細な開示が求められる。


5|反論に対する留保(法的配慮)

本稿は公開資料に基づく事実整理と問題提起であり、特定の個人や団体の不正を断定するものではない。会計の正当性、契約の合意、各組織の内部事情には合理的な説明がある可能性が高い。よって、公開にあたっては当事者のコメントを本文に反映し、事実確認を行うことを前提とする。名誉毀損や侮辱につながる断定的表現は避け、出典を明示して報じるべきである。


6|公開前に必ず取るべき手続き(チェックリスト)

以下は公開前の必須検証リストだ:

  1. 日本赤十字社へ書面で質問(下欄にテンプレあり):原料血漿の海外委託・輸出状況、原料提供の対価、契約の開示可否。

  2. 厚生労働省へ公式統計の確認依頼:血漿分画製剤の国内生産能力・輸入比率の最新データ。

  3. 主要製薬企業へ質問:日本向け製剤の製造・加工拠点と、原料の調達ルート。

  4. 役員経歴の一次確認:役員名簿PDFや官報で出身省庁・在任期間を突合。

  5. 法的チェック(必要に応じて弁護士):見出し・リードの表現を最終確認。


7|取材テンプレ(赤十字・厚労省・製薬向け)

(A)日本赤十字社宛(書面)

  • 「貴社が採取した原料血漿のうち、過去3年度において海外へ輸出または海外委託加工された血漿の総量(L)と割合(%)を教えてください。該当の輸出先国と委託先企業名(公表可能な範囲)もお示しください。」

  • 「原料提供に関する対価の決定方法と、その主要契約の要旨(数量・価格のレンジ)を開示可能かご教示ください。」

(B)厚生労働省宛(書面)

  • 「血漿分画製剤の国内生産能力(年換算)と、直近年度における輸入比率(%)の公式数値を示してください。また、国内拡大に向けた政策支援の計画があれば教えてください。」

(C)主要製薬企業(国内外)宛

  • 「日本市場向けに供給している血漿分画製剤の主要製造拠点(国・工場名)と、原料の調達ルートについてご説明ください。」


8|結語:市民の善意と説明責任

献血は個人の善意に基づく社会資本だ。その循環がどのように設計され、誰が利益を受け、誰が負担するのかは、公益の根幹に関わる問題だ。出典に基づく検証と当事者への取材を経て、国民が納得できる説明が出ることを私は期待する。まずはこの記事と出典リストを武器に、当事者に公の場で説明を求めよう。


付録:主要出典(抜粋)

  • 日本赤十字社:役員一覧・事業報告(公式PDF)。

  • 厚生労働省:血液関連の統計・報告資料。

  • BIS:Board / 会合記録(公式)。

  • CSIS:Japan Chair スタッフ・訪問フェロー(公式)。

  • WEF:Annual Meeting(Davos)レポート・ギャラリー。

  • Octapharma / Grifols / CSL 等:企業年次報告・事業概要(公開資料)。

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