何で車が高くなったのか?何で家が高くなったのか?
ここ数年、車も家も驚くほど高くなりました。
以前なら手が届いた価格帯の新車が、今では平気で200万円、300万円を超える。軽自動車でさえ、装備を付ければ普通車に近い金額になります。
住宅も同じです。
土地が特別広いわけでもない。豪華な家でもない。それなのに、建物価格も土地価格も上がり、住宅ローンの借入額は膨らみ、返済期間も長くなっていく。
なぜ、ここまで高くなったのでしょうか。
表面上の理由はいくつも説明されています。
- 原材料価格が上がった
- 円安で輸入部品や燃料が高くなった
- 半導体不足や物流費の上昇があった
- 人手不足で人件費が上がった
- 安全装備や環境性能が追加された
- 耐震、省エネ、断熱など住宅に求められる基準が増えた
- 都市部では土地の需要が強い
これらは、すべてが嘘という話ではありません。実際に価格を押し上げる要因です。
しかし、問題はここで説明を終わらせてしまうことです。
「材料が高いから仕方がない」
「安全のためだから仕方がない」
「規制だから仕方がない」
そう言われると、多くの人はそこで考えることをやめてしまいます。
けれども本当に見るべきなのは、その先です。
価格が高くなった結果、誰がどのような商品を売りやすくなったのか。現金で買えない人に何が提案されるのか。支払いが終わるまで所有権や選択権は誰が握るのか。返却された車や手放された不動産は、次に誰が買い取って利益を得るのか。
つまり、個々の値上げ理由だけではなく、値上げ後に完成する仕組み全体を見なければなりません。
車が高くなった直接的な理由は確かに存在する
まず、車の値上がりには現実的な理由があります。
鉄、アルミ、樹脂、半導体、電池などの原材料や部品の価格、物流費、エネルギー価格が上昇し、円安になれば輸入部材の円換算価格も上がります。経済産業省も、乗用車価格の上昇要因として原材料価格、原油価格、円安などを挙げています。
さらに、現在の車には昔にはなかった多くの装備が加わりました。
衝突被害軽減ブレーキ、各種センサー、カメラ、運転支援装置、排出ガス対策、電子制御装置などです。国土交通省は衝突被害軽減ブレーキを、国産の新型車には2021年11月から、継続生産車には2025年12月から義務化しました。今後はペダル踏み間違い時加速抑制装置の義務化も予定されています。
安全性が高まること自体は悪いことではありません。事故を減らし、命を守る技術には大きな意味があります。
ただし、ここで分けて考える必要があります。
安全装備に価値があることと、すべての消費者が高額化した新車へ無理なく乗り換えられることは別問題です。
装備や基準が増えるたびに車両価格や修理費が上がり、簡単な部品交換で済んだ故障でも、センサー調整や電子制御装置の診断が必要になる場合があります。購入時だけでなく、修理、保険、維持まで含めて負担が重くなるのです。
だからこそ、規制を追加する政治や行政には、安全効果だけでなく、国民負担、低価格車の選択肢、既存車を長く使うための整備環境まで説明する責任があります。
家が高くなった理由も「材料費」だけではない
住宅も、木材、鉄、コンクリート、住宅設備、断熱材などの価格上昇に加え、建設業の人手不足や人件費、物流費の上昇が影響しています。国土交通省は建設工事費デフレーターや住宅経済関連データを継続的に公表しており、建築費、地価、技能労働者不足などを分けて確認できます。
さらに、住宅には耐震性、省エネルギー性能、断熱性能、各種設備など、以前より多くの性能が求められます。これも住み心地や安全性の向上につながる一方、建築費を押し上げる要因になります。
都市部では土地価格そのものも上昇しています。国土交通白書によると、2025年の地価公示では全国の全用途平均、住宅地、商業地がいずれも4年連続で上昇しました。低金利環境や都市部の住宅需要、再開発、ホテル・店舗需要など、複数の要因が重なっています。
ここでも、表面上の説明だけなら間違いではありません。
しかし、家が高くなり、一般の給与では現金購入がほぼ不可能になれば、住宅ローンへの依存はさらに強くなります。借入額が増え、返済期間が延び、金利変動の影響を受ける期間も長くなります。
価格が上がれば、金融商品が必要になる。
金融商品が必要になれば、販売価格だけでなく、金利、保証料、手数料、保険、借り換え、延滞時の扱いまで含めた長期的な収益が生まれます。
つまり、高額化した家は、単なる「住宅」ではありません。購入者にとっては生活基盤ですが、売る側、貸す側、投資する側から見れば、長期間にわたって収益を生む金融資産にもなるのです。
新品が高くて買えないなら中古へ――しかし中古にも海外需要が入る
新車や新築住宅が高くなれば、多くの人は中古を探します。
これは当然です。まだ使える物を直しながら長く使うことは、経済的にも環境的にも合理的です。
しかし、その中古市場にも別の需要が入っています。
中古車は海外需要と輸出の影響を受ける
日本の中古車は、整備状態や耐久性に対する評価が高く、海外でも需要があります。円安になれば、外貨を持つ海外の買い手から見て日本の中古車が相対的に安くなるため、オークションなどで国内業者と輸出業者が競合しやすくなります。
環境省と経済産業省の審議会では、国内で解体される車両と中古車として輸出される車両の合計に占める輸出比率が、コロナ禍前のおおむね3割から、2024年度には約4割へ上昇したとの業界説明が行われています。
これは、中古車価格の上昇がすべて海外需要だけで起きたことを意味しません。新車の納期、国内の下取り台数、人気車種、オークション相場、輸送費なども影響します。
それでも、国内で再利用できる車が海外市場へ流れれば、特定の車種や低価格帯の在庫が薄くなり、国内価格を押し上げる圧力になり得ます。
ここで正確に書くなら、「外国人が日本国内で中古車を大量購入している」と一括りにするより、円安と海外需要を背景に中古車輸出が増え、国内市場でも買い手が競合していると表現すべきでしょう。
不動産は地域差が大きいが、国外からの取得増加は確認されている
不動産についても、「外国人が全部買っている」と言えば言い過ぎになります。地方には空き家や売れない土地が大量にあり、全国の住宅価格が外国人購入だけで上がったとは言えません。
一方で、影響が確認されている地域まで無視するのも間違いです。
国土交通省は、2018年1月から2025年6月までに登記された三大都市圏と地方4市の新築マンション約55万戸を調査しました。その結果、東京都を中心に、大阪府、京都府の一部で、国外に住所がある者による取得割合が高く、増加する傾向や、中心部ほど割合が高まりやすい傾向が確認されています。
ただし、同じ調査では、国外居住者が2億円以上の高額物件を特に活発に購入している傾向は確認されなかったともされています。
つまり、必要なのは賛成か反対かの感情論ではありません。
- どの地域で取得が増えているのか
- 実需なのか投資なのか
- 短期転売はどの程度あるのか
- 空室のまま保有されていないか
- 地域住民の居住費に影響しているのか
- 国外居住者と国内居住者を分けて把握できているのか
- 国籍、実質的所有者、資金の出所を行政が確認できているのか
こうした情報を整備し、地域ごとに判断できる制度が必要です。
高くて買えない人に提案される「月々いくら」という考え方
車両価格が高くなると、販売現場では総額よりも「月々いくらで乗れるか」が強調されやすくなります。
300万円という価格を見れば買えないと思う人でも、「月々3万円」と言われれば払えるように感じるからです。
住宅も同じです。
総返済額ではなく、「今の家賃と同じくらい」「月々○万円」という説明が前に出れば、35年、40年、場合によってはそれ以上の長期返済でも、目の前の支払額だけで判断しやすくなります。
しかし、月額を小さく見せる方法は、価格そのものを安くしたわけではありません。
- 頭金を入れる
- ボーナス払いを設定する
- 返済期間を延ばす
- 最後に大きな金額を残す
- 金利や手数料を長期間支払う
こうした方法で、月々の表示だけを小さくしているにすぎない場合があります。
だから契約を見るときは、必ず総額に戻して考えなければなりません。
残クレはどのような仕組みなのか
残価設定型クレジット、いわゆる「残クレ」は、契約終了時点の車の想定価値をあらかじめ残価として設定し、車両価格のうち残価を除いた部分などを月々支払う仕組みです。
そのため、一般的な分割払いより月々の支払額を低く見せやすくなります。
契約終了時には、一般に次のような選択肢があります。
- 車を返却する
- 新しい車へ乗り換える
- 残価を一括または再分割で支払い、車を買い取る
残クレそのものが違法な仕組みというわけではありません。
数年ごとに新しい車へ乗り換えたい人、走行距離が少ない人、車を丁寧に使える人、終了時の選択肢を理解している人には、利便性があります。
しかし、注意点もあります。
「月々が安い」と「支払総額が安い」は同じではない
残価を最後に残せば、契約期間中の月額は小さくできます。しかし、最後まで自分の車として乗り続けるためには、残価の支払いが必要です。再クレジットを利用すれば、さらに金利や手数料が発生する可能性があります。
トヨタファイナンスも、最終回に買い上げを選び残価を含めて支払う場合、一般的なクレジットの方が支払合計額が軽くなる場合があると案内しています。
返却には条件がある
返却を選んでも、どのような状態でも無条件で終わるとは限りません。
走行距離、内外装の傷、事故修復歴、違法改造などが契約条件を超えれば、追加精算が必要になる場合があります。ホンダファイナンスの案内でも、走行距離や内外装の減点が規定を超えた場合の負担金が示されています。
途中で自由に手放せるとは限らない
通常のローンでも所有権が販売会社や信販会社に留保される場合があります。カーリースであれば、そもそも所有者はリース会社です。国民生活センターも、カーリースは原則として中途解約できず、解約できる場合でも解約料が生じること、走行距離などの制約があることを注意喚起しています。
ここで、元の問題提起にあった「払えなくなったら奪い取られる」という表現を、契約上の言葉に置き換えてみましょう。
それは、支払いが滞った場合、契約解除、期限の利益の喪失、残債の一括請求、所有権に基づく車両返還などが行われ得る仕組みです。具体的な扱いは契約によって異なります。
販売会社や金融会社が突然他人の財産を奪うという単純な話ではありません。契約の段階で、代金を完済するまで所有権や処分権を相手側が握る条件に同意している場合があるということです。
だから怖いのは、「奪われる」という言葉だけではありません。
自分では買ったつもりでも、完済まで誰が所有者なのか、途中で何ができるのか、払えなくなったらどうなるのかを理解しないまま契約することが本当の危険なのです。
大垣尚司氏は住宅金融の仕組みにどの程度関わっているのか
ここで、住宅版の残価設定ローンを調べると必ず名前が出てくる人物がいます。
大垣尚司氏です。
結論から言えば、大垣氏の関与は「外から意見を述べている専門家」という程度ではありません。
日本におけるモーゲージバンクの導入、日本住宅ローンの設立と経営、住宅の金融価値を算出する仕組み、移住・住みかえ支援機構(JTI)による残価保証、残価設定型住宅ローンの商品化という一連の流れに、構想・経営・研究・制度運営の複数の立場から深く関わってきた人物です。
確認できる関与を整理すると、次のようになります。
| 分野 | 確認できる大垣氏の関与 |
|---|---|
| 公的住宅金融の転換 | 旧住宅金融公庫から、証券化を軸とする住宅金融支援機構への転換過程に関わり、民間の受け皿となるモーゲージバンクを提唱したと本人が説明 |
| 日本住宅ローン | 日本初期のモーゲージバンクである日本住宅ローンの設立に関与し、代表執行役社長・代表取締役社長を歴任 |
| 残価算定技術 | 住宅の金融価値、許容返済額、残価設定時期などを算定・管理するシステムを研究し、特許第6419280号を本人名義で取得 |
| JTI | 2006年から移住・住みかえ支援機構の代表理事を務め、現在も残価保証制度の運営主体を率いる |
| 残価設定型住宅ローン | JTIが残価保証と買取選択肢を設計し、日本住宅ローンが融資商品を提供する仕組みの開発に関与 |
| 国土交通省との接点 | 自ら呼びかけて住宅メーカー・金融機関等の開発協議会を組成し、国土交通省の補助事業に採択された枠組みの中で、実務課題を協議して成果を国へ報告 |
青山学院大学の研究者情報には、大垣氏が日本住宅ローンの代表執行役社長を務めた経歴が掲載されています。本人のインタビューでも、モーゲージバンクという新しい金融機関を提唱し、その第1号の設立に関与したうえで日本住宅ローンの社長を務めたと説明しています。
立命館大学の研究報告書には、残価設定型住宅ローンを可能にする住宅の金融価値算定・リスク管理システムを開発し、大垣氏本人が出願人・発明者となる特許を取得したことも記録されています。
したがって、大垣氏を「住宅残クレを解説している学者の一人」とだけ見るのは不正確です。
より正確に表現するなら、日本の市場型住宅金融と残価設定型住宅ローンの両方について、制度と事業の原型を作った中心人物の一人と評価できます。
大垣氏は住宅用の残価設定型ローンを国土交通省と協議した一人なのか
この問いには、言葉の意味を分けて答える必要があります。
広い意味では「はい」と言ってよい。けれども、国土交通省と二人三脚で政策そのものを決定した正式な共同立案者だった、とまでは公表資料から確認できないというのが、最も正確な結論です。
立命館大学の2019年度研究センター事業報告書には、次の経緯が記録されています。
- 大垣氏が中心となって、JTIと住宅用の残価設定型ローン、リスク管理モジュール、新型リバースモーゲージの開発を進めた
- 大垣氏の呼びかけで、住宅メーカー、地方銀行、モーゲージバンク、学識経験者からなる「長寿命住宅の世代循環を促す新たな住宅金融開発協議会」を組成した
- 同協議会が国土交通省の「住宅ストック維持・向上促進事業」に応募し、採択された
- 2019年・2020年の事業期間に1,591万円の事業費補助を受けた
- 協議会の下に実務ワーキンググループを置き、実務上の課題を協議し、開発成果を完成報告書として国へ提出した
国土交通省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会でも、当時の住宅生産課長が、残価設定ローンについて「金融機関や業界団体と一緒に仕組みづくりを検討する事業を補助している」と説明しています。また、2020年の中間とりまとめ案には、将来の住宅価値の算定、買取保証、残価設定ローンなどを通じて質の高い住宅の流通を促す方向が示され、2021年に閣議決定された住生活基本計画にも残価設定ローン等の多様な金融手法の活用が盛り込まれました。
さらに、国土交通省は2025年12月、住宅金融支援機構(JHF)が金融機関の残価未回収リスクを引き受ける「特定残価設定ローン保険」の創設を発表しました。2026年3月に閣議決定された最新の住生活基本計画も、リバースモーゲージや残価設定型住宅ローン等の普及、高齢期の返済負担を軽減できるローンの整備を政策の方向として掲げています。
ここで注意したいのは、2025年に国が発表した保険制度が、JTIの「一定期間後に二つのオプションを使える残価保証」と完全に同一の仕組みとは限らないことです。国の説明では、借入額から将来の残価を差し引いた部分を毎月返済し、残価部分を売却等で精算する商品を想定しています。これは、当初の返済額を減らさないJTI型の従来説明より、自動車の残価設定ローンに近い面があります。
国の2025年発表資料と2026年計画には、大垣氏やJTIがこの新しい保険制度の設計に直接参加したとの記載は確認できません。したがって、大垣氏が国土交通省の補助事業下で住宅残価の実用化を進めたことと、2025年以降の国の保険制度を大垣氏が直接設計したことは、分けて扱う必要があります。
つまり、流れを簡略化すると次のようになります。
大垣氏ら民間側が住宅残価の技術・商品を研究する → 大垣氏の呼びかけで住宅メーカーと金融機関の協議会をつくる → 国土交通省の補助事業の中で実務課題を検討する → 成果を国へ報告する → 国の住宅政策でも残価設定ローンの普及が施策として位置づけられる
この事実関係から、大垣氏を「国土交通省と無関係に民間商品を作っただけの人物」と説明するのは不正確です。国の補助事業を活用し、業界横断の協議会を率いて、制度の実用化を進めた中心人物の一人だったことは確認できます。
ただし、ここには重要な留保があります。
- 国土交通省の補助を受けたことと、国が商品を保証したことは同じではない
- 補助事業の採択と、個別のローン契約の安全性を国が認定することは同じではない
- 住生活基本計画の審議委員名簿や議事録から、大垣氏本人が政策文言を決定したことまでは確認できない
- 国土交通省、JTI、金融機関、ハウスメーカーが一つの法人や一つの意思決定主体になったわけではない
したがって、記事で使うなら、次の表現が妥当です。
大垣尚司氏は、住宅用の残価設定型ローンを考案・開発し、自ら組成した住宅メーカー・金融機関等の協議会を通じて、国土交通省の補助事業の枠内で実務課題を検討し、成果を国へ報告した中心人物の一人である。一方、国の政策決定を単独で主導した、あるいは国土交通省との正式な共同立案者だったと断定できる公表資料は確認できない。
なお、大垣氏と国土交通省の接点はこの時期だけではありません。2007年以降には国土交通省の住宅金融支援機構分科会の臨時委員を務め、2014年には国土交通省住宅局が事務局を務めた安心居住政策研究会で外部有識者としてヒアリングを受けています。これらは残価設定型住宅ローンそのものの共同開発を直接証明する資料ではありませんが、大垣氏が以前から公的住宅金融・住宅政策の検討の場に関与してきたことを示します。
ただし、大垣氏を単純な「住宅残クレ推進の黒幕」と呼ぶのも違う
一方で、大垣氏の主張を確認すると、若い人に返済期間の長いローンを組ませる従来型住宅金融に対して、むしろ強い批判をしています。
大垣氏は、住宅価格の上昇によって返済が定年後まで続く問題を挙げ、借り手が高齢期まで借金に縛られる現状に疑問を示しています。その解決策として、将来収入が減ったときに返済額を軽くする選択肢と、家を返せばその時点のローン残高をゼロにできる選択肢を付けようとしているのが、JTI型の残価設定型住宅ローンです。
車の残クレのように数年後の返却を前提として月額を小さく見せる商品とは、狙いも構造も同じではありません。
JTIの制度では、あらかじめ定められた残価設定月以降、主に次の二つの選択肢を行使できると説明されています。
- 元本返済を大きく減らす新型リバースモーゲージへ切り替え、月々の負担を軽減する
- JTIに住宅をローン残高と同額で買い取ってもらい、残債を解消して住み替える
これは、返済不能になってから競売や任意売却へ進む前に、契約時から出口を用意するという発想です。
その意味では、借り手を一方的に追い込むための制度というより、高齢期の返済負担や住宅価格下落に備える保険的な仕組みとして設計されています。
しかし、善意の目的で作られた制度であっても、誰が得をし、どの住宅が選ばれ、最終的に誰が家を取得するのかは検証しなければなりません。
日本住宅ローンと大手ハウスメーカーはどのような関係なのか
日本住宅ローン株式会社(MCJ)は、一般の銀行がたまたま大手ハウスメーカーと提携している会社ではありません。
日本住宅ローン自身の公表資料によれば、同社は2003年5月、積水ハウス、大和ハウス工業、当時の日立キャピタルによる出資で設立されました。2004年4月には住友林業と積水化学工業が資本参加しています。
現在は持株会社である日本住宅ローングループ株式会社を通じ、次の5社が出資会社として公表されています。
- 積水ハウス株式会社
- 大和ハウス工業株式会社
- 住友林業株式会社
- 積水化学工業株式会社(セキスイハイム)
- 三菱HCキャピタル株式会社
つまり、住宅を販売する4大ハウスメーカーと金融会社が共同で所有する、住宅ローン専門金融機関です。
日本住宅ローンの公式サイトにも、積水ハウス、ダイワハウス、住友林業、セキスイハイム限定の「Sプラン」と、その他の提携会社向け「Gプラン」、一般申込向けプランが分けて掲載されています。
したがって、ハウスメーカーと日本住宅ローンの関係は、単なる紹介提携ではなく、少なくとも次の三つの層でつながっています。
- 資本関係――ハウスメーカーが日本住宅ローングループの出資会社である
- 販売関係――ハウスメーカーの商談から提携ローンへ顧客を案内できる
- 商品関係――株主ハウスメーカーの住宅を対象とする限定プランや、長期優良住宅向け商品が用意されている
日本住宅ローン自身も、この関係を「ハウスメーカー提携ローンによるワンストップサービス」と表現しています。
売る側と貸す側は、完全に独立しているわけではない
この資本関係から分かることは、住宅を売る側と住宅購入資金を貸す側が、完全に無関係な別組織ではないということです。
ハウスメーカーにとっては、住宅の性能や建築計画を理解した提携金融機関が融資を提供すれば、高額な住宅を販売しやすくなります。
日本住宅ローンにとっては、全国規模のハウスメーカーから継続的に住宅ローン利用者を紹介してもらえるため、顧客獲得がしやすくなります。
購入者にとっても、住宅の商談と融資手続を一か所で進められ、長期固定金利や長期優良住宅向けの制度を利用しやすいという利点があります。
つまり、三者の利害は次のように一致します。
| 当事者 | 主な利点 |
| ハウスメーカー | 購入資金を用意しやすくなり、高性能・高価格帯の住宅を販売しやすい |
| 日本住宅ローン | ハウスメーカー経由で融資利用者を確保し、融資・手数料・管理回収業務を拡大できる |
| 購入者 | 建物と融資を一体で相談でき、条件に合えば長期固定金利や専用プランを利用できる |
この関係自体は公開されており、違法でも秘密でもありません。
しかし、販売担当者から提案されたローンが、本当に購入者にとって最も有利なのかは別問題です。
住宅の価格、提携ローンの条件、他の銀行の金利、融資手数料、団信、繰上返済条件を切り離して比較しなければ、家とローンを一つの商品として勢いで契約することになります。
フラット35では住宅ローン債権が住宅金融支援機構へ売却される
日本住宅ローンの主要事業の一つが、住宅金融支援機構の証券化支援事業を利用したフラット35などの提供です。
フラット35の買取型では、民間金融機関が顧客へ融資した後、その住宅ローン債権を住宅金融支援機構へ売却します。機構は買い取った多数の住宅ローン債権を裏付けとしてMBS(資産担保証券)を発行し、投資家から資金を調達します。
債権を売却した金融機関は、機構から委託を受けるサービサーとして、その後も借り手から返済金を受け取り、機構へ引き渡します。
つまり、フラット35の該当商品では、資金とリスクの流れは次のようになります。
ハウスメーカーが住宅を販売する → 日本住宅ローンが融資を実行する → 住宅金融支援機構が債権を買い取る → MBSとして投資家の資金につなぐ → 日本住宅ローンが返済の管理・回収を続ける
日本住宅ローンは、35年間すべての融資資金を自社で抱え続ける必要がありません。公的機関による証券化の仕組みがあるからこそ、預金を集めないモーゲージバンクでも長期固定金利の住宅ローンを大量に提供できます。
そして大垣氏は、まさにこの市場型住宅金融とモーゲージバンクの導入に深く関わった人物です。
住宅ローンは誰に証券化され、誰が私たちの返済から収益を得るのか
ここからは、一般的な商品説明では目立ちにくい金融の裏側です。
住宅購入者が毎月返しているのは、目の前の銀行やモーゲージバンクへ単純に借金を返しているだけとは限りません。住宅ローン債権が売却され、多数の債権を束ねた証券の裏付けとなり、その証券を保有する投資家へ元利金が流れる仕組みがあります。
住宅は「住む場所」です。
しかし金融市場から見れば、住宅ローンは、何十年にもわたって毎月現金を生む「金融資産」です。
家は担保になり、ローンは売買できる資産になり、借り手の毎月の返済は投資家へ流すキャッシュフローになります。
これは陰謀論ではありません。住宅金融支援機構が公式に説明し、実際に何十兆円規模で運用されてきた公表済みの制度です。だからこそ問題なのは、制度が存在することそのものより、借り手にどこまで説明されているのかです。
「配当」ではなく、投資家が受け取るのは元利金
最初に、用語を正確にしておきます。
株式を持つ人が会社の利益から受け取るのが「配当」です。住宅ローン債権を裏付けにしたMBS・RMBSを買った投資家が受け取るのは、原則として証券の利息と元本償還金です。
日常語では「証券を買って配当を受ける」と表現されることがありますが、厳密には同じものではありません。
住宅金融支援機構のMBSは、裏付けとなる住宅ローンプールから入ってくる返済を基に、投資家へ毎月元利金を支払う月次パススルー型です。借り手が繰上返済すれば、投資家への元本償還の時期も変化します。
つまり、住宅購入者が支払う毎月の元金と利息は、回収機関と住宅金融支援機構を通り、MBS投資家への支払原資になります。
フラット35買取型で起きている資金と返済の流れ
フラット35買取型の流れを、できるだけ単純にすると次のようになります。
- 日本住宅ローンなどの金融機関が、住宅購入者へ融資する
- 金融機関が、その住宅ローン債権を住宅金融支援機構へ売却する
- 住宅金融支援機構が、多数の住宅ローン債権を信託銀行へ担保目的で信託する
- 住宅金融支援機構が、その債権群を裏付けにMBSを発行する
- 銀行、保険会社、年金関係機関などの投資家がMBSを買い、機構へ資金を出す
- 機構はその資金を使い、住宅ローン債権の買取代金を金融機関へ支払う
- 借り手は、従来どおり窓口となる金融機関へ毎月返済する
- 金融機関は回収した返済金を機構へ引き渡し、機構はMBSの元利金を投資家へ支払う
お金の流れを二方向に分ければ、もっと分かりやすくなります。
| 流れ | 内容 |
| 融資資金 | MBS投資家 → 住宅金融支援機構 → 融資した金融機関 → 住宅購入資金 |
| 毎月の返済 | 住宅購入者 → 回収を担当する金融機関 → 住宅金融支援機構 → MBS投資家の元利金 |
ここで重要なのは、住宅購入者が返済窓口しか見ていなくても、債権の経済的な流れはその先まで続いているということです。
金融機関は債権を売却した後も、借り手から返済を受け付ける「サービサー」として管理・回収を続けます。このため借り手からは、契約相手が何も変わっていないように見えやすいのです。
住宅金融支援機構の2026年の投資家向け資料によれば、2025年度末までのMBS累計発行額は36兆円を超えています。住宅購入者一人ひとりの返済が、巨大な債券市場を下支えしていることになります。
証券を買い、元利金を受け取るのは誰なのか
住宅金融支援機構は、現在の投資家向けページで、国内外の投資家から毎月数千億円規模の資金を調達していると説明しています。
ただし、「この借り手のローンを、この投資家が持っている」という対応表が一般に公開されるわけではありません。多数の住宅ローンを一つのプールにして証券化するからです。
住宅金融支援機構が過去の公式なIR活動で訪問・説明対象として挙げた投資家層には、次のような組織があります。
| 投資家・関係者 | どのように関わるか | 受け取るもの |
| メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合 | 自己資金でMBSなどを購入 | 証券の利息と元本償還 |
| 生命保険会社など | 保険料を運用する資産の一部として債券を購入 | 証券の利息と元本償還 |
| 年金・共済関係機関 | 年金・共済資産の運用対象として購入 | 運用収益。加入者がMBS利息を直接受け取るわけではない |
| 投資運用会社・ファンド | ファンドの運用方針に従って購入 | 利息・売買損益。投資信託の基準価額や分配原資へ反映され得る |
| 地方公共団体、学校法人など | 余裕資金の債券運用として購入する場合がある | 証券の利息と元本償還 |
| 海外機関投資家 | 円建て債券などの運用対象として購入 | 証券の利息と元本償還 |
| 個人投資家 | 証券会社が個人向けに取り扱う場合の直接購入、または投資信託などを通じた間接保有 | 直接保有なら元利金、投資信託なら値上がり益・分配金など |
ここで注意が必要です。
預金者や保険契約者は、銀行や保険会社がMBSを買ったからといって、そのMBSの直接の所有者になるわけではありません。年金加入者も同じです。組織が運用主体であり、個人には運用成果が間接的に及ぶだけです。
また、現在の各MBSを誰が何%保有しているのか、最終的な個人名まで網羅した名簿は、公表資料からは確認できません。したがって、特定の個人や団体が特定の家庭のローンから直接利益を受け取っている、と名指しで断定することはできません。
しかし、投資家の名前が見えないから制度が存在しないわけではありません。住宅ローン債権を束ね、借り手の返済を証券の元利金へ変換している構造そのものは、公式資料で明確に確認できます。
住宅ローンから収益や手数料を得る主体は、投資家だけではない
一件の住宅販売と住宅ローンの周囲には、複数の収益機会があります。
| 主体 | 主な収益・経済的利益 |
| ハウスメーカー | 建物・土地の販売利益、点検、修繕、リフォームなどの継続収入 |
| 融資を実行する金融機関 | 融資手数料、契約関連手数料、債権売却代金、商品によっては金利収入 |
| 返済管理を行う金融機関・サービサー | 返済金の管理・回収に関する手数料 |
| JTIなど制度関係者 | 適合証明、残価保証、オプション設定など、各契約で定められた料金 |
| 住宅金融支援機構 | 債権買取・証券化業務を運営し、調達と住宅ローンの資金循環を担う |
| 信託銀行 | 信託財産の管理に関する手数料 |
| 証券会社・引受会社 | MBSの引受け、販売、事務などに関する手数料 |
| MBS・RMBS投資家 | 証券の利息と元本償還、売買した場合の損益 |
各主体が正当な業務の対価を受け取ること自体を、直ちに不正と呼ぶことはできません。
しかし、借り手は35年、場合によっては50年に近い返済と維持管理義務を負います。その一方で、債権は売却され、証券化され、投資家の運用対象になる。であるならば、借り手に対しても、誰が何の名目で手数料を受け取り、誰が金利リスク、信用リスク、残価下落リスクを負うのかを説明するのが当然ではないでしょうか。
月々の返済額だけを大きく見せ、金融の流れを契約書の奥へ追いやることは、説明とは呼べません。
日本住宅ローンは、独自のグリーンRMBSも発行している
日本住宅ローンは、公式サイトでグリーンRMBSのプログラムを公表しています。
これは、日本住宅ローンが保有する一定の住宅ローン債権を裏付けとして信託受益権を発行し、投資家から資金を調達する仕組みです。対象となる債権には、フラット系ローンだけでなく、日本住宅ローン独自の住宅ローンも含まれます。適格基準には、長期優良住宅や高い省エネルギー性能を持つ住宅、フラット35SのZEH基準などが使われています。
さらに同社の公表資料では、独自ローンの対象候補に、一般の住宅ローン、リフォームローン、リバースモーゲージ型住宅ローンなども含まれ得るとされています。
ここは重大です。
ハウスメーカーが高性能住宅を販売し、提携金融機関がローンを供給し、長期優良住宅やZEHという公的な性能基準を使って債権の適格性を説明し、その債権を環境配慮型の証券として投資家へ販売する――住宅の販売、政策基準、融資、証券市場が一本につながる構造が、すでに存在しています。
ただし、公表資料だけでは、JTIの「ローンのお守り」を利用した個々の残価設定型住宅ローンが、すべて日本住宅ローンのグリーンRMBSへ組み入れられているとは確認できません。
確認できるのは、住宅ローン債権を証券化する枠組みが存在し、独自ローンやリバースモーゲージ型債権も対象候補になり得ることです。確認できないのは、個別の残価設定型ローンが実際にどの証券プールへ入ったのかという対応関係です。
ここを混同して「残価設定型ローンは全部証券化されている」と断言すれば、追及する側の信用を失います。逆に、金融機関側は、個別対応が分からないことを理由に全体の構造まで説明しなくてよいわけではありません。
証券化されるのは、将来の家そのものではなく住宅ローン債権
もう一つ、誤解してはいけない点があります。
証券化の中心となるのは、将来の家そのものや残価買取オプションそのものではなく、金融機関が持つ住宅ローン債権です。
大和ハウスが紹介した「ローンのお守り」は、フラット35など通常の住宅ローンへ、将来の残価買取や返済額軽減の選択肢を付ける設計です。元になるローンがフラット35買取型であれば、その住宅ローン債権は住宅金融支援機構の証券化ルートに乗り得ます。しかし、残価買取オプションだけが切り離され、一つの証券として投資家へ販売されていることまで、公表資料は示していません。
また、MBS投資家一人ひとりが、返済できなくなった家庭へ直接乗り込み、家を取り上げるわけでもありません。
延滞時の督促、期限の利益の喪失、任意売却、競売などは、契約上の債権者、回収を委託された金融機関やサービサーなどが、法令と契約に基づいて行います。投資家は、その結果を含む住宅ローンプール全体のキャッシュフローと信用リスクにさらされます。
だから「投資家が直接家を奪う」と書くのは正確ではありません。
正確に追及するなら、問うべきは次です。
返済不能時に誰が債権者として判断し、誰が回収を指示し、誰が住宅を売却し、売却代金がどの順序で債権回収、保証、保険、投資家への支払いへ充てられるのか。
ここまで説明されて初めて、借り手は自分が入る仕組みを理解したと言えるのです。
2026年の「特定残価設定ローン保険」は、誰のリスクを公費で軽くするのか
国土交通省と住宅金融支援機構は、2025年度補正予算により「特定残価設定ローン保険」を創設しました。国の出資金は14億5,200万円です。住宅金融支援機構は制度発表時、2026年3月の開始予定として、通常の元利均等返済部分とリバースモーゲージ部分を組み合わせる仕組みを説明しました。
この制度では、将来の残価を当初の借入額から差し引くため、借り手の月々の返済を抑えられます。そして死亡時や売却時に住宅価格が想定残価を下回った場合、一定の条件の下で借り手へ不足分を請求しないノンリコース型とし、金融機関に生じる損失を住宅金融支援機構の保険で補う設計です。
借り手を残債リスクから守ることには、明確な意義があります。
しかし、同時に厳しく問わなければなりません。
なぜ、住宅価格の将来下落という金融機関側のリスクを、公的機関の保険と国費で軽減する必要があるのか。
その一方で、住宅の販売利益、融資手数料、証券化手数料、サービシング収入、投資家の利息収入は、誰がどれだけ受け取るのか。
利益を民間の各主体が得るなら、損失だけを公的制度へ移すことになっていないか、徹底的な検証が必要です。
もちろん、14億5,200万円の出資金が直ちに個々の損失へそのまま支払われるわけではありません。保険料、支払条件、回収、残存住宅の処分などを含む保険制度です。だから「税金で全部穴埋めする」と短絡的に断定すべきではありません。
それでも、公的資本で金融機関の残価下落リスクを支える以上、少なくとも次の情報は国民へ開示されるべきです。
- 誰が残価を算定し、どの地価、家賃、空室率、修繕費、流動性を前提にするのか
- 残価算定者とハウスメーカー、金融機関、保証・保険関係者の独立性をどう確保するのか
- 金融機関が支払う保険料は、想定損失に対して十分なのか
- 保険金が支払われた後、住宅と売却代金に関する権利は誰へ移るのか
- 売却価格が想定を上回った場合の利益は、誰へ帰属するのか
- 想定残価を下回る案件が増えた場合、追加の公費投入を行うのか
- 対象ローンが売却・証券化される場合、投資家、保証者、保険者のリスク分担はどう変わるのか
- 延滞率、保険事故率、回収率、売却価格、支払保険金を商品別・金融機関別に公表するのか
「若い世代でも家を買いやすくなる」という言葉だけで終わらせてはいけません。
月々の返済額を低く見せれば、より高い住宅を販売しやすくなります。金融機関は残価下落リスクの一部を公的保険へ移せます。債権が証券化されれば、投資家の運用商品にもなります。
では、誰が一番長く拘束されるのか。
借り手です。
借り手は返済を続け、認定を維持するために点検・修繕を行い、売却や借換えの条件を守り、最後に住宅をどう処分するかという判断まで背負います。その負担を小さな文字にし、供給側の「住宅販売促進」「金融市場の拡大」「既存住宅の流通」だけを政策効果として掲げるなら、それは消費者政策として片手落ちです。
国と金融機関が答えるべき、逃げられない質問
この制度を本気で検証するなら、感情的な批判ではなく、次の質問へ文書で回答を求めるべきです。
- この住宅ローン債権は、融資実行後に誰へ売却されるのか
- 買取型、保証型、金融機関の自己保有のどれに該当するのか
- 証券化される場合、誰が発行者、信託受託者、サービサー、引受会社になるのか
- 借り手が支払う金利・手数料のうち、各主体へ渡る金額はいくらか
- MBS・RMBSの投資家へ、どの返済金がどの条件で渡るのか
- 延滞時に誰が回収方針を決め、任意売却や競売を判断するのか
- 残価保証・残価保険が実行された場合、損失を最終的に負担するのは誰か
- 公的保険が金融機関へ支払われた後、住宅の売却益や回収金は誰へ帰属するのか
- 大垣尚司氏、JTI、日本住宅ローン、ハウスメーカー、国土交通省、住宅金融支援機構は、制度設計のどの段階で、どの会議に参加したのか
- 会議資料、議事録、利益相反管理、残価算定モデル、保険収支をなぜ全面公開しないのか
これらは、誰かを犯罪者扱いする質問ではありません。
国民が何千万円もの債務を負い、国費まで使われる制度なら、当然に答えられなければならない質問です。
住宅金融の仕組みは複雑だから説明できないのではありません。複雑な商品を一般消費者へ売る以上、分かる言葉で説明する責任があるのです。
「契約書に書いてあります」では足りません。
「制度上、問題ありません」でも足りません。
「住宅取得を支援するためです」だけでは、なお足りません。
誰が売り、誰が貸し、誰が債権を買い、誰が証券を買い、誰が利息を受け取り、誰が損失を負担し、返せなくなったとき誰が家を処分するのか。
その全体像を一枚で示さずに、月々の返済額だけを広告するのであれば、消費者に本当の価格を知らせているとは言えません。
住宅を買いやすくしたのか。それとも、住宅ローン債権を作りやすくし、売りやすくし、投資商品にしやすくしたのか。
国、住宅金融支援機構、金融機関、JTI、ハウスメーカーには、この問いから逃げず、数字と契約関係と議事録で答える責任があります。
大垣氏、JTI、日本住宅ローン、大和ハウスの接続
残価設定型住宅ローンになると、関係はさらに具体的です。
大和ハウス工業の2022年の発表によれば、「ローンのお守り」は、大垣氏が代表理事を務めるJTIと日本住宅ローンが共同開発した残価設定型住宅ローンです。大和ハウスは、このローンを利用できる住宅事業者として最初の認定を受け、全国で紹介を始めました。
この商品の関係者を整理すると、次のようになります。
| 役割 | 主体 |
| 住宅を建てて販売する | 大和ハウスなど認定住宅事業者 |
| 住宅ローンを提供する | 日本住宅ローン |
| 建物の長期維持管理体制を認定する | JTI |
| 将来の収益還元価値を算定し、残価を保証する | JTI |
| 条件到達後の残価買取オプションを担う | JTI |
| フラット35部分の債権を買い取り、証券化する | 住宅金融支援機構 |
| 制度を利用し、返済と維持管理を行う | 住宅購入者 |
これは、この記事で考えてきた「売る側、貸す側、買い取る側、ルールを作る側」がかなり近い位置で接続する実例です。
ただし、ここから直ちに「最初から家を取り上げるための仕組みだ」と断定することはできません。
残価買取オプションは強制ではなく、条件到達後に借り手が選べる出口です。市場でより高く売れるなら、通常売却を検討する余地もあります。反対に、住宅の市場価値がローン残高を下回っても、条件を満たせば残債を解消できる点は借り手の保護になります。
見るべきなのは、制度の存在そのものを善悪で決めることではありません。
- 残価は市場で売れる価格ではなく、どのような家賃・地価・維持費を基に算定されるのか
- 認定を維持するために、指定された点検や修繕へいくら必要になるのか
- 一般の工務店の住宅でも公平に認定を受けられるのか
- 提携ハウスメーカーの高価格住宅を販売するための金融支援に偏っていないか
- JTIの買取価格より通常売却価格が高い場合、その比較が借り手へ十分説明されるか
- リバースモーゲージへ切り替えた後の金利、手数料、死亡時の精算条件はどうなるのか
- 住宅を買い取った後、誰が保有し、誰に貸し、どのように再流通させるのか
こうした条件を契約前に確認できるかどうかです。
長期優良住宅の認定と、残価設定型住宅ローンを利用できるメーカーには相関があるのか
ここは、言葉の混同が起きやすい部分です。
よく「長期優良住宅の認定メーカー」と言われますが、法律上、国や自治体がハウスメーカー全体を一括して「長期優良メーカー」に認定する制度ではありません。
長期優良住宅は、一棟ごとの住宅の建築・維持保全計画について、建築主または分譲事業者が着工前に所管行政庁へ申請し、認定を受ける制度です。構造・設備、住戸面積、地域の居住環境、維持保全計画、災害への配慮などが審査されます。
したがって、同じハウスメーカーで建てても、すべての住宅が自動的に長期優良住宅になるわけではありません。商品、設計、敷地、地域、申請の有無によって結果は変わります。反対に、必要な性能と計画を満たせば、地域工務店が建てる住宅でも認定を取得できます。
JTI型の残価設定ローンでは、長期優良住宅は「必要条件」だが「十分条件」ではない
JTIが公表している残価保証の利用条件を見ると、対象は単に長期優良住宅であればよいわけではありません。
主な条件は次のとおりです。
- 自己居住用の戸建住宅であること
- 一棟ごとに長期優良住宅の認定を受けること
- JTIが残価導入企業として認定したハウスメーカー・住宅事業者が施工すること
- その事業者について、JTIが承認した長期メンテナンスプログラムを実施すること
- JTIが「残価設定型住宅ローン利用適合証明書」等を発行できる住宅であること
- 市街化調整区域ではなく、JTIの借上げ制度による賃貸が極めて困難な地域・住宅に該当しないこと
- JTIの指定金融機関の融資審査に通ること
関係を表にすると、次のようになります。
| 比較項目 | 長期優良住宅の認定 | JTIの残価保証・残価設定型住宅ローン |
| 制度の主体 | 法律に基づき所管行政庁が認定 | JTIが住宅事業者・住宅・残価保証を審査し、指定金融機関が融資審査 |
| 認定の単位 | 原則として一棟ごとの建築・維持保全計画 | 一棟ごとの住宅に加え、施工事業者とメンテナンス体制も対象 |
| メーカー制限 | 特定メーカーに限定されない | JTIが認定した残価導入企業に限定 |
| 住宅種別 | 戸建て、共同住宅、既存住宅にも制度がある | 現行のJTI残価保証は認定長期優良住宅の自己居住用戸建てが基本 |
| 地域制限 | 認定基準と自治体の運用による | 市街化調整区域などは対象外となり得る |
| 金融機関 | 認定そのものには特定の金融機関は不要 | JTI指定金融機関と別途の融資審査が必要 |
| 認定後の義務 | 認定計画に沿った維持保全、記録の作成・保存 | 長期優良住宅の義務に加え、JTI承認の長期メンテナンスプログラムを実施 |
集合の関係でいえば、JTI型については、「残価設定型住宅ローンの対象住宅」は「長期優良住宅」の一部です。
長期優良住宅の認定を取っただけでは、JTIの残価保証は付きません。一方、JTI型の残価保証が付く住宅は、原則として長期優良住宅の認定を受けていなければなりません。
これが、両者に相関があるように見える最大の理由です。統計的に偶然似ているのではなく、JTIが長期優良住宅を制度上の入口にしているため、仕組みとして強い包含関係があるのです。
現在、どのメーカー・住宅事業者が利用できるのか
2026年8月28日時点でJTIが公表している大手・広域住宅事業者の一覧には、次の10社が掲載されています。
- 旭化成ホームズ
- 住友林業
- 積水化学工業(セキスイハイム)
- 大和ハウス工業
- トヨタホーム
- パナソニックホームズ
- 北洲
- ミサワホーム
- ヤマダホームズ
- ロゴスホールディングス
さらに、JTIの現行ページには、アート建工、石橋工務店、大元工務店、中広地所、百年住宅、ヘルシーホーム、明工建設、ヤマジホームなど、地域ビルダー・工務店等も多数掲載されています。2025年4月以降には一般工務店の制度利用開始も相次いで公表されており、残価保証が大手ハウスメーカーだけの制度で固定されているとは言えません。
指定金融機関としてJTIが現在公表しているのは、次の3社です。
- 日本住宅ローン
- 三菱UFJ銀行
- 楽天銀行
ただし、一覧にあるメーカーで建てれば、誰でも、どの家でも、必ず残価設定型住宅ローンを借りられるわけではありません。対象商品・地域・建物の証明書に加え、年収、年齢、信用状況、借入額などについて金融機関の通常の融資審査があります。また、すべての住宅事業者が3金融機関の全商品を同じ条件で案内できるとは限りません。
日本住宅ローンの出資ハウスメーカーとの重なり
日本住宅ローングループへ出資する住宅メーカー4社と、JTIが現在公表する残価保証対応の大手・広域住宅事業者を照合すると、次のようになります。
| 日本住宅ローングループの出資住宅メーカー | JTIの現行残価保証対応一覧への掲載 |
| 大和ハウス工業 | あり |
| 住友林業 | あり |
| 積水化学工業(セキスイハイム) | あり |
| 積水ハウス | 現行のJTI公表一覧では確認できず |
会社数だけでいえば、出資住宅メーカー4社のうち3社、75%がJTIの現行一覧と重なります。
これは確かに強い重なりです。ただし、これだけで資本関係が残価保証の認定を決めたと証明することはできません。JTIの対応一覧には、日本住宅ローンの出資会社ではない旭化成ホームズ、トヨタホーム、パナソニックホームズ、ミサワホーム、地域ビルダーなども掲載され、指定金融機関にも三菱UFJ銀行と楽天銀行があります。
したがって、確認できるのは、日本住宅ローンの株主メーカー群とJTI残価保証の初期・主要な利用メーカー群に大きな重なりがあるという事実です。その原因が資本関係なのか、長期維持管理能力なのか、全国販売網なのか、商品開発への参加なのかを分離する公開データは不足しています。
なぜ大手ハウスメーカーほど対応しやすいのか
大手ハウスメーカーと残価設定型住宅ローンの間に相関が生まれやすい理由は、陰謀を想定しなくても説明できます。
- 規格化された設計と施工基準があり、長期優良住宅の申請を標準業務に組み込みやすい
- 30年、40年、60年単位の点検・修繕プログラムを全国で運営しやすい
- 設計図書、点検履歴、修繕履歴などの住宅履歴情報を長期間保存しやすい
- 将来の賃貸運用や買取時に、品質と修繕状態を評価しやすい
- 金融機関と専用ローンを共同開発し、販売現場で説明できる人員を置きやすい
- 制度開発やシステム対応に必要な費用を負担しやすい
残価は「何十年後にも貸せる、売れる、維持されている」という前提がなければ保証できません。だから、長期保証、定期点検、部品供給、修繕網を持つ大手メーカーが初期の対象になりやすいのは合理的です。
その一方で、この構造には競争上の注意点があります。
長期優良住宅の認定自体はメーカーを選ばないのに、残価保証はJTIが認めた施工会社とメンテナンスプログラムを条件にします。その結果、金融上の有利さが、特定のメーカー、指定点検、指定修繕、指定金融機関と結びつきやすくなります。
購入者から見ると、「家を選ぶ」「住宅ローンを選ぶ」「将来のメンテナンス会社を選ぶ」「売却・賃貸の方法を選ぶ」という本来別々の判断が、一つのパッケージになり得るのです。
これは品質を守り、将来価値を保証するために必要な統合でもあります。しかし同時に、指定外の修繕を選びにくい、制度から離脱すると保証を失う、他社へ自由に乗り換えにくいといった囲い込みの可能性も生みます。
なお、JTIは、残価保証を利用する住宅をJTI以外の仕組みで賃貸すると証明書が失効すると説明しています。災害などで居住困難になった場合にも証明書が失効します。長期優良住宅であることだけに注目せず、保証が継続する条件と失効条件まで確認する必要があります。
相関関係についての結論
結論を一文でまとめると、次のようになります。
長期優良住宅と残価設定型住宅ローン対応メーカーには強い制度上の相関がある。ただし、長期優良住宅は住宅単位の行政認定であり、残価設定型住宅ローンはそこへJTIによる事業者認定・長期メンテナンス・地域条件・指定金融機関の融資審査を重ねた別制度である。両者は同一ではなく、「長期優良住宅なら自動的に住宅残クレが使える」という理解は誤りである。
また、メーカー別の長期優良住宅認定率と残価ローン利用率を同じ母集団で比較できる公的統計は、今回確認した範囲では公表されていません。そのため、厳密な統計上の相関係数を示すことはできません。ここで述べている相関は、公開された利用条件と企業一覧から確認できる制度上・組織上の重なりです。
日本住宅ローングループは不動産会社と信用保証会社も持つ
2026年現在、日本住宅ローングループ株式会社の傘下には、日本住宅ローン株式会社に加え、日本住宅ローン不動産株式会社とTM信用保証株式会社も置かれています。
これにより、グループが融資だけでなく、不動産と信用保証の領域へ事業基盤を広げていることは確認できます。
ただし、公表されている会社概要だけでは、日本住宅ローン不動産が返済困難者の住宅を買い取って再販する会社なのか、TM信用保証がどの商品をどの範囲で保証するのかまでは判断できません。
したがって、現時点で「融資して、払えなくなったらグループ不動産会社が安く回収する仕組みが完成している」と断定する根拠はありません。
一方で、融資、保証、不動産が同じ持株会社の下に置かれた以上、今後どのように役割分担し、顧客情報や利益相反を管理するのかは、継続して確認すべき重要な点です。
大垣氏と日本住宅ローンの関係から何が分かるのか
大垣氏の歩みを追うと、日本の住宅金融が次の方向へ変わってきたことが見えます。
- 国が住宅購入者へ直接的に長期資金を貸す住宅金融公庫型から、公的機関が民間ローンを買い取り証券化する仕組みへ移行する
- ハウスメーカーと金融会社が出資するモーゲージバンクが住宅購入資金を提供する
- 高性能で長寿命な住宅に金融上の価値を付け、長期ローンや残価保証を組み合わせる
- 将来返済が難しくなれば、負担を減らすか住宅を残債相当額で買い取る出口を用意する
- 買い取った住宅を賃貸・再流通させ、住宅を一世代で使い捨てない市場を作る
この構想には、空き家を減らし、良質な住宅を長く使い、高齢期の返済破綻を防ぐという合理性があります。
同時に、高額な認定住宅、長期ローン、指定された維持管理、残価保証、買取・賃貸・再流通が一つの仕組みに組み込まれることで、購入後も消費者が制度の外へ出にくくなる可能性があります。
だからこそ、人物を悪者にして終わるのではなく、制度設計者、ハウスメーカー、金融機関、公的機関、保証・買取主体の関係を公開し、消費者が別の選択肢と比較できるようにすることが必要です。
大垣氏がどこまで関わっているのかという問いへの答えは、次のようになります。
構想、会社設立、経営、研究、特許、保証制度、商品化まで非常に深く関与している。ただし現在の日本住宅ローンの経営者ではなく、制度の目的も「家を取り上げること」ではなく、長期ローンからの出口を作ることにある。だからこそ、目的だけでなく実際の運用と利益の流れを監視する必要がある。
売る側、貸す側、買い取る側がつながると何が起きるのか
ここからが最も重要な部分です。
車を例にすると、次の役割があります。
1.売る側
メーカーや販売店は車を売ります。車両価格が高くなっても、月額表示や下取り、残価設定を組み合わせれば販売できます。
2.貸す側
銀行、信販会社、メーカー系金融会社などが購入資金を提供します。ここでは金利、手数料、保証、保険などの収益が生まれます。
3.回収・買い取り・再販する側
契約終了時に返却された車、途中で手放された車、下取り車は、中古車市場、オークション、輸出などへ流れます。状態がよく人気のある車なら、再び商品として販売できます。
4.ルールを作る側
国は安全基準、環境基準、税制、車検制度、金融規制、消費者保護、所有権、輸出入などのルールを決めます。
この四者が一つの企業である必要はありません。
秘密の会議を開いて、全員が一つの計画を共有している必要もありません。
それぞれが自分の利益に沿って動いた結果として、
高額化する → 現金で買えない → ローンや残クレを使う → 定期的に返却・乗り換えが起きる → 良質な中古品を回収して再販する
という循環が完成することはあります。
これを「陰謀」と呼ぶかどうかは本質ではありません。
大切なのは、意図を証明できるかではなく、実際にどのような利益構造と依存関係が出来上がっているかを見ることです。
家でも同じ構造は起こり得る
住宅の場合も、構造は似ています。
建築会社や不動産会社が売り、銀行が融資し、保証会社や保険会社が入り、返済が困難になれば売却や競売などによって資産が市場へ戻ります。投資家や買取再販業者が取得し、再販売や賃貸で収益化することもあります。
住宅ローンを払えなくなったからといって、直ちに家を取り上げられるわけではありません。金融機関への早期相談、返済条件の変更、任意売却など、状況に応じた対応があります。
それでも、借入額が大きく、期間が長いほど、失業、病気、離婚、金利上昇、収入減少などの影響を受けやすくなります。
家を買った人が形式上は所有者でも、抵当権が設定され、返済できなければ最終的に処分される可能性がある。これは住宅ローンという契約の基本です。
だからこそ、価格高騰と金融依存を別々に見てはいけません。
「所有する社会」から「支払い続ける社会」へ
以前は、安い中古車を買って自分で直しながら長く乗る。小さな家を買い、少しずつ手を入れながら暮らす。そうした選択が今よりしやすい時代がありました。
ところが、商品価格が上がり、電子化や複雑化が進み、修理や改修にも専門設備が必要になると、個人が自分で維持する余地が小さくなります。
そして、購入ではなくリース、所有ではなく利用、買い切りではなく定額課金、短期的な月額負担を優先する方向へ進みます。
もちろん、所有しない方が便利な物もあります。
しかし、何もかもが「利用権」になり、支払いを止めた瞬間に生活基盤へアクセスできなくなる社会は、本当に自由なのでしょうか。
所有には維持責任があります。一方、所有しないことには、契約相手の条件変更、審査、停止、回収に左右される危険があります。
便利さだけでなく、誰が最終決定権を持つのかを考えなければなりません。
政治を見るなら「どの党か」だけでなく「何を決めたか」を見る
ここまで来ると、当然、政治の話になります。
安全基準を決めるのも、金融や契約のルールを決めるのも、外国資本による不動産取得の実態把握や規制を決めるのも、最終的には国会、政府、行政です。
では、どの党がこの流れを主導し、どの党が協力し、どの党が反対しているのでしょうか。
ここで注意したいのは、すべてを一つの賛否にまとめないことです。
例えば、衝突被害軽減ブレーキの義務化は、自民党・公明党による連立政権下で進められました。しかし、安全装備の義務化に賛成したからといって、それだけで「国民から車を奪う仕組みに賛成した」と断定するのは飛躍です。事故削減という明確な目的があるからです。
一方で、規制による価格上昇や修理費への影響、低価格車の選択肢、古い車を大切に使う人への負担を十分に検証したかは、別途問うことができます。
外国人・外国資本による不動産取得についても、2026年時点では各党の主張に変化があります。
- 自民党は、土地・建物・森林・農地などの国籍把握と透明化、外国人の土地取得に関する新たな法的ルール、マンション取引規制の検討を掲げています。
- 参政党は、外国人による住宅購入の制限、土地購入の厳格化・原則禁止、相互主義など、より強い規制を掲げています。
- 日本保守党は、安全保障上の脅威となる外国勢力による不動産、特に土地の買収禁止を重点政策に掲げています。
ただし、政策ページに書いてあることと、実際に法案を提出したか、国会でどう質問したか、採決でどう投票したか、予算を付けたかは別です。
また、「反対している党はどこか」と問う場合も、何に反対しているのかを明確にしなければなりません。
- 安全装備の義務化に反対なのか
- 国民負担を検証しない進め方に反対なのか
- 残クレそのものに反対なのか
- 説明不足の販売方法に反対なのか
- 外国人による住宅取得の全面禁止を求めるのか
- 投機目的の短期転売だけを規制するのか
- 国籍ではなく、国内外を問わず投機取引を規制するのか
論点が違えば、各党の立場も変わります。
だから、政党名だけで白黒を決めるのではなく、法案、採決、予算、規制の中身、実施後の検証を一つずつ確認する必要があります。
政党を判断するために確認したい10項目
私は、次の点を各党や候補者に確認すべきだと思います。
- 車両安全規制を追加する際、車両価格と修理費への影響を試算しているか
- 低価格で整備しやすい車を市場に残す考えがあるか
- 古い車を長く大切に使う人へ、一律に重い負担を課していないか
- 残クレやカーリースの総支払額、所有者、返却条件を分かりやすく表示させるか
- 月額だけを強調する広告や説明を適切に規制するか
- 中古車輸出が国内価格と整備・解体業界へ与える影響を把握しているか
- 国外居住者による不動産取得、短期転売、空室保有の実態を公開するか
- 国籍だけでなく、実質的所有者と資金の出所を把握する制度を作るか
- 投機によって地域住民が住めなくなる場合、税制や取得制限を検討するか
- 政策を実施した後、国民負担と利益を得た業界を検証し、公開するか
これに具体的に答えられない政党が、選挙前だけ「国民の生活を守る」と言っても、信用する材料にはなりません。
私たち消費者が契約前に確認すべきこと
政治や制度が変わるのを待つだけではなく、自分の契約を守ることも必要です。
車を買うとき
- 車両本体、オプション、諸費用を含む現金購入総額
- 通常ローンの総支払額
- 残クレの総支払額
- 残価部分にも金利・手数料が関係するか
- 最後に買い取る場合の金額と再クレジット条件
- 返却時の走行距離、傷、事故歴、改造の精算条件
- 中途解約・早期完済の条件
- 車検証上の所有者と使用者
- 延滞時の契約解除、一括請求、車両返還の条件
- 同じ車を5年、10年乗る場合に最も安い方法
月々の金額だけではなく、必ず紙に書いて横並びで比較することです。
家を買うとき
- 土地代と建物代の内訳
- 諸費用を含む購入総額
- 固定金利と変動金利それぞれの総返済額
- 金利が1%、2%上がった場合の返済額
- 固定資産税、火災保険、修繕費
- 収入が2割減っても返済できるか
- 売却時に残債が残らないか
- 周辺の実需、投資需要、空室率、短期転売の状況
- 新築だけでなく中古住宅と修繕費を含めた比較
- 払えなくなった場合の相談先と任意売却などの選択肢
買えるかどうかではなく、長く維持できるかどうかで判断することが重要です。
「陰謀かどうか」で議論を終わらせてはいけない
このような話をすると、すぐに「陰謀論だ」と片付ける人がいます。
確かに、証拠がないのに、すべての値上げや制度変更が一つの秘密計画によるものだと断定すれば説得力を失います。
しかし反対に、陰謀を証明できないからといって、利益構造や制度の偏りまで存在しないことにはなりません。
- 誰が利益を得るのか
- 誰が危険を負うのか
- 誰がルールを作ったのか
- 誰が所有権を持つのか
- 支払いが止まったとき、誰が最終決定権を持つのか
- 返却・回収された資産は次にどこへ流れるのか
- 制度導入後の結果を誰が検証しているのか
この流れを確認することは、陰謀論ではありません。
経済と契約と政治を考えるうえで、当たり前の作業です。
まとめ――価格ではなく、仕組みを見よう
何で車が高くなったのか。
何で家が高くなったのか。
原材料、円安、人件費、安全基準、環境基準、建築基準。表面上の理由はたくさんあります。
しかし、そこで思考を止めてはいけません。
高くて買えなくなったときに、どのようなローンや残クレが提案されるのか。
中古へ向かったとき、海外需要や輸出、投資資金とどのように競合するのか。
払えなくなったとき、所有権と処分権は誰が持っているのか。
返却、回収、売却された車や家を、次に誰が買い取り、誰が利益を得るのか。
そして、その全体を可能にしているルールを誰が作り、誰が維持し、誰が見直そうとしているのか。
売る側。
貸す側。
買い取る側。
ルールを作る側。
この四つを別々に見るのではなく、一本の流れとして見てください。
すべてが最初から計画されていたと断定する必要はありません。
けれども、結果として国民が所有しにくくなり、借り続け、払い続け、返却し続ける社会が出来上がっているのなら、その仕組みは検証されなければなりません。
どの党が何を進めたのか。
どの党が協力したのか。
どの党が本当に反対し、具体的な法案や修正案を出したのか。
イメージやテレビの印象ではなく、法案、採決、予算、実績を見て判断しましょう。
表面の説明だけで納得せず、金と所有権とルールの流れを見る。
考えましょう。
私たちの暮らしの主導権を、誰に渡そうとしているのかを。
参考資料
- 経済産業省「乗用車の価格上昇の要因を探る」
- 国土交通省「乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準を導入し、新車を対象とした義務付けを行います」
- 国土交通省「ペダル踏み間違い時加速抑制装置の搭載を義務づけます」
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」
- 国土交通省「令和7年度 住宅経済関連データ」
- 国土交通省「不動産業の動向と施策」
- 国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果」
- 環境省「産業構造審議会・中央環境審議会 自動車リサイクル制度に関する合同会議」
- 国民生活センター「カーリースに関する消費者トラブルにご注意!」
- トヨタファイナンス「残額据置き払い」
- ホンダファイナンス「残価設定型クレジットの車両返却条件」
- 日産フィナンシャルサービス「残価設定型クレジットとは」
- 国税庁「使用済自動車に係る自動車重量税の廃車還付申請手続」
- 自民党「外国人政策|Jファイル2026」
- 参政党「政策カタログ2026」
- 日本保守党「重点政策項目」
- 青山学院大学「研究者情報―大垣尚司」
- 立命館大学「2018年度 研究センター事業報告書」
- 移住・住みかえ支援機構「JTIについて」
- 移住・住みかえ支援機構「残価保証と残価設定型住宅ローンについて」
- 日本住宅ローン「日本住宅ローン株式会社とは」
- 日本住宅ローン「会社概要」
- 日本住宅ローン「株主限定プラン」
- 日本住宅ローン「日本住宅ローングループ株式会社 会社概要」
- 日本住宅ローン「日本住宅ローン不動産株式会社 会社概要」
- 日本住宅ローン「TM信用保証株式会社 会社概要」
- 大和ハウス工業「全国で残価設定型住宅ローンの紹介を開始」
- 住宅金融支援機構「証券化支援業務(買取型)の概要」
- 文化放送「銀行や住宅金融機構は冷たすぎる!住宅ローンの現状を大垣尚司が斬る」
- 文化放送「残価設定型住宅ローン スタートから2年」
- 立命館大学「2019年度 研究センター事業報告書」
- 国土交通省「社会資本整備審議会住宅宅地分科会(第53回)議事録」
- 国土交通省「社会資本整備審議会住宅宅地分科会 中間とりまとめ案」
- 国土交通省「長期優良住宅のページ」
- 移住・住みかえ支援機構「協賛事業者募集」
- 移住・住みかえ支援機構「協賛社員等」
- 移住・住みかえ支援機構「残価保証制度・一般工務店 利用開始」
- 移住・住みかえ支援機構「2025年4月利用開始企業」
- 移住・住みかえ支援機構「2025年7月利用開始企業」
- 国土交通省「安心居住政策研究会 中間とりまとめ」
- 国土交通省「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル(第1回)議事概要」
- 国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」
- 国土交通省「残価設定型住宅ローンの供給促進のための住宅融資保険制度の創設」
- 住宅金融支援機構「証券化支援業務(保証型)の概要」
- 住宅金融支援機構「投資家向け情報」
- 住宅金融支援機構「2026年度 投資家向け説明資料」
- 住宅金融支援機構「貸付債権担保住宅金融支援機構債券の仕組み」
- 住宅金融支援機構「平成27年度業務実績報告書」
- 日本住宅ローン「グリーンRMBS」
- 国土交通省「特定残価設定ローン保険の創設(概要)」
- 住宅金融支援機構「特定残価設定ローン保険を開始します」
※本稿は2026年8月28日時点で確認できる公表資料を基に、制度と市場の構造について筆者の問題意識を加えて論じたものです。大垣尚司氏、各法人、ハウスメーカーによる違法行為や共謀を主張するものではありません。個別のローン、残価設定型クレジット、リース、住宅ローンの条件は契約によって異なります。契約前に必ず契約書、支払総額、所有権、返却・解約・延滞時の条件を確認してください。

